◎マニフェスト選挙と少子化対策について(その3、なお5/13日投稿分を含めれば、その4)
脱線に次ぐ脱線とその中における重複の発生で、マニフェスト選挙とマニフェストの一例示:6重点項目についての説明が、要領の悪いものとなった点はお許し願いたい。ただし、このブログでは一貫して、実務では戦略的的対応や複眼思考の必要性を強調しており、反面、白か黒かの直線的・直感的議論は、無責任な評論で、長期的影響への配慮を欠く場合が多いことを指摘し、これらを総じて日本教の悪影響として、低評価する立場をとっている。お役人のセクショナリズムについても、同様の傾向(役所毎の各利害という一面性)から、複数並列の現行役所の体制では重複の累積で「大きな政府」につながるものとして、その制度改革の必要性を説いている。この間一方では、国民の側についても、お任せ民主主義はお役所を肥大化させるものとして、官庁依存の安易な行き方の反省が必要、またそうすることが、時間はかかるとしても最終的には自立した市民のためになるとの考え方・改革の必要性を述べている。
過去のブログを振り返ると、マニフェストの全体像・骨子の検討を、2008年12月10日から2009年3月22日にかけ、9回に分けて検討した。この中には、日本の将来を明るくする道程としての潜在成長率目標2%確保とそのメカニズムの重要性説明も入っている(1月21日〜2月18日の3回)。また此は、官庁セクショナリズムの非効率排除と国民全員参加のシナジー効果とを加味できれば、3%弱の成長も夢ではないことを意味しよう。そうして、絞り込んだ結果の(言わば結論である)当面の重点6項目・具体策の各概略説明とこれ等の相互関連性を、2009年4月1日から4月30日の3回に分けて記述した。その後、マニフェスト選挙が間近になる機運から、マスコミの論議盛り上がりもあり、マスコミが伝える多くの主張が一面的性格の声ばかりであることに対し、当ブログの6項目案は、此等の声とはかなり性格が違っていることを指摘した。すなわち、主要6項目のうち、第1(公的年金の2階建て部分=高額所得者の部分=の民営化=計算上の積み立て方式化案)、第2(若者中心のライフワークバランス回復措置=少子化対策の具体案)、第3(定年制廃止、年金支給開始時期の選択制とそのためのワークシェアリング、具体的には定年後の職場確保と女子労働力化率の引き上げ、そのための税制改正案)、の3点については、5月13日から6月4日にかけての4回で、上記の線に沿って、その補足説明を行っている。
残っているのは、第4(教育改革)、第5(官僚のセクショナリズム是正改革、高級官僚人事権の内閣府帰属化・官民交流人事、及び、各官庁の成績評価)、第6(道州制指向)の3点となるが、これらは本来的には、いずれも工程表を作って、期間をかけ、一歩一歩実施するような施策であろう。ただ、第4の教育改革は、前回の改革が「ゆとり教育の是正」というややピント外れの方向性で実施されているので、その是正は緊急性を持つものであるし、また、文科省と厚労省間のセクショナリズム是正問題として幼稚園・保育所一体改革という、第2項目との関連もあり、早急に優先解決が望ましい部分の存在として補足指摘しておく必要があろう。
第4の教育改革では、学生の理科離れとそれによる実学教育面の進歩の停滞・日本の競争力低下にもっと目を向ける必要がある。理系の大卒学生数は、日本では最盛期の6割に減ってしまったようである。また、これを対外比較で見ると、最近中国では年間約40万人、インドでは35万人の理科系大卒生がいるのに対し、日本の理系大卒生は5万人弱に過ぎないとマスコミでは報道されている。その結果の一例では、日本の原発では、つまらない事故が多数発生し、そのために原発の稼働率が米国やフランスと較べて格段に低いし、六カ所村の核燃料工場の操業開始計画が10回以上の計画遅延改訂の上、結局10年以上も完成予定が遅れてまだ出来ていないという現状がある。また、東南アジアからの見学の技術者からは、日本の原子力技術は、中国・韓国より水準が低いとの発言が出るようになったとの報道もある。さらに、このところ建設機械の操作ミスによる事故報告が頻繁に為されている。建機の操作者や、この現場監督はそれぞれその資格を取っているはずであるが、学生の理科離れ傾向の長期継続の結果が現場での技能劣化として表れているようにも見受けられる。日本の人的資源の劣化がすでに始まっていることを推察させるものとして、ゆゆしい問題点と受け取れるのだが、此への対策がすぐに用意されない戦略性の無さは、さらに問題とされなければならない。そして、此への対策が、マニフェストに掲記されないとすると、そのこと自体が、日本の将来を暗くするような問題点と見なければならないと思われてしまう。
この問題の原因は、学校側の技術者教育に問題があるのか、はたまた、技術者を受け入れた経営者側が技術者の活動環境整備や処遇、先輩からの後輩指導、遅れているとすればキャッチアップのための派遣留学等の対応策への配慮が欠けている点等等に問題があるのかと、あれこれ考えてしまう。しかし、何れにせよ、濃淡の違いはあるとしても、両方に問題有りと見て、その原因療法を考えるべき状況と思われる。対策はいろいろあり得るはずである。因みに、日本の昭和初期の自動車会社からは、日本の熟練工がアメリカへ技術指導を受けに行き、アメリカ側も当然のことながら、肝腎重要な機密事項は教えてくれなかったが、その派遣者は、アメリカの工員達が業後に呑みにゆくバーへ行き、工員達との会話を通して、アメリカの機密技術の要点の聞き出し、かつ、推測も加えて、ほとんどその全容を会得して帰ってきたという歴史の記録がある。学生の理科離れと理系技術者の技能劣化とは、彼等への動機付けに欠けるところが大きい原因のようにも思われる。いずれにせよ、この事態は、日本の潜在成長率低下に、大きく影響する要因と考えられるから、各方面からの対応措置が準備されなければならない筈であろう。2大政党のマニフェスト作りの担当者には、このような戦略的配慮を行ってもらいたいと、筆者は切に思う次第である。
その対応措置は、大学数やその定員を増やすよりは、高校以前の教育課程で教員の質を高め、授業内容を面白く分かりやすくすることが大切である。これは、知育偏重で暗記の量的拡大志向の教育では、上記のニーズには合わないはずだからである。これは理系の学問では特にそうである。また、文系の学生に対しては、結果の平等を狙わず、機会の平等確保(つまりは、奨学金制度の充実を伴うとの条件付き)を狙いとして、道州制単位で少数精鋭の公立優良校を作り、国の指導層を育成する教育制度を探求する必要があると考えられる。大学に入ってからも、判断力を高めるために、古典教養教育を推奨する意見も傾聴に値するし、判断力の鍛錬には、会話能力、討論の能力を高める実技の機会が増えるような制度的仕組みも望ましいのではないだろうか。
また、その財源は、公的支出補助金は従の役割分担とし、学校法人の財政面の強化は、税制で、つまり、寄付金控除の拡充で主として行われるべきであろう。ここに価格機能が働く余地を取り入れることが肝要と思われる。補助金から、税制の寄付控除へと財源を切り替えることは、大きな政府から小さな政府への方向性のある制度改正になることも理解していただけると思う。優秀な大学は、公立と私立が併存し、結果の平等ではなく、機会の平等を確保しつつ、現在の日本の優良専門大学は、少数精鋭でレベルアップを図るべきであろうと思われる。そうして、潜在成長率確保の実績を確保できる段階で、つまりは、少子化が止まった段階では、大学の定員を増やす方向を考えても良いとは思うが、教育内容も、教養教育・古典教育をかなり重視し、形態も生涯学習の形を取り、夜間の定員を増やす、キャリアアップ教育を充実させる等の方向で、教育内容を考えるべきであろう。因みに、アメリカでは、専門教育の少数優秀大学と、コミュニティーカレッジという多数の大学とがあり、アメリカの専門優秀大学は、入学の難易度より卒業の難度がはるかに高く、卒業困難の学生は、コミュニティーカレッジへの編入が斡旋されるそうである。これにより、学問の水準の向上と劣化防止が図られていると見られる。日本では、教養教育・キャリアアップについては、スローアンドステディーコースが準備されるという方向性が、日本人の習性:誠実・勤勉・信頼性が高い・忍耐力有り等の特性に合っていて、最大多数の最大幸福を実現する正攻法になるものと見られる。
何れにしても、教育制度を如何に改革してゆくかは、米百俵の精神に基づき、充実の方向で、また、その方向性を間違えないように実行することが望まれる。
第五の、セクショナリズム排除対策が、急を要する事由は、厚労省と文科省の高級官僚人事を、内閣府に帰属させたり、これらの人事に官民交流を取り入れることが肝要と見られるからである。官庁の抵抗は強いだろうが、だからこそ、マニフェスト選挙でこれを民意の多数決で決める形が望ましいということになる。此については、小泉改革の郵政選挙に習って、強力な実行体制を整えることが望まれる。その方法論のコツは、竹中大臣日記に詳しく書かれている。そして、此が実効を挙げるためには、各省の成績評価を行う仕組みを創設定着させ、此れについては特に情報公開を行うべきであろう。それゆえ、マニフェストとか、改革工程表には、数値目標が入ることが望ましいし、その目標達成状況とか、それとの乖離があった場合には、その要因分析の結果報告を、行政管理庁・会計検査院・ないし、第3者機関の監査法人にさせるようなシステムが計画されるべきである。与党でも、野党でも、このような資料を国会に提出せよと要求することが、国会議員の役目の一つと思われるし、此が為されないのであれば、これをマニフェストに取り入れることを、与野党が競い合うような雰囲気作りからその世論喚起の手順へと、事を進めるべきであろう。その推進担当者については、本来的に、これはマスコミの役割でなければならないと筆者は考える。このような方向性を作るために、学校教育や社会教育が、それなりに為される様に進化することが望まれる。そうでなければ、国民は救われないように思われる。だとすれば、此と並行して、国民を救う立場にあるオンブズマンの制度を作っておくことも大切となる。此は、本来は公営とされているが、非営利団体形式で、かって自動車の排ガス規制でラルフ・ネーダーが活動したような、民間のオンブズマンが活動する雰囲気を作るように、社会教育が為されてしかるべきとも考えられる。
さらに一言加えると、日本の現状は、複合汚染の結果、複合不況に陥っていると見られる。少子化をもたらした要因と、金融バブル崩壊による要因とが共鳴するように働き、両方の原因から事態が悪化し、不況に陥っている。日本教のような構造要因もあるし、減反政策を採りながら、耕作放棄地が大きく広がるという問題点も、上記6項目の対象から外れながら、なかなか手が付けられないでいる様に現状の困難の度合いはかなり大きい。しかしながら、あまりに細かく、沢山の事項に目を奪われると、虻蜂取らずになるので、中心的6項目に絞り込んで、これを強調するという戦略的対応も、この際は肝要という配慮を行うべきであろう。
なお、次回は、上記の更なる補足、資料的追加という位置づけで、2週間後に、世帯所得の長期動向数値についてと、「厚生年金制度回顧録」という資料と、また、高齢者の失業対策事業の対象として何が望ましいのかに関する提案、等も加えて、構造改革を推進する方法について追加的補足を考える予定である。

